Viola Dream II

阿蘇カルデラスーパーマラソン(第25回):挑戦記

 熊本空港、6月5日の12時過ぎ。14か月前まで私の愛車だったティーダが、
長男を乗せて私を迎えに来てくれました。長男が運転する車に乗るのはこ
れが初めて。いっちょ前に運転する息子の様子が、可笑しくて。後になって
思い出すと、こういった浮かれた気分がいけなかったのかもしれません。強
い風と雨の中、肥後大津駅近くの馬勝蔵へ行きました。二人で食事するの
も久しぶりです。昼食後、近くのイオンで翌日の朝食を購入。散々迷った挙
句、好物の粒あんの大福6個にバターロール6個。14時半頃に阿蘇市総合
センターで受け付けを済ませましたが、このときは土砂降り。明日は天気が
回復するようで、こんな雨の中を走らずに済むことに感謝。

 ホテルに着くとまず温泉。夕食はホテル紹介のお店、味どころさくら。ご当
地赤牛の焼肉と馬刺しを食べました。ホテルに戻って大福1個を食べ、21時
過ぎに就寝。さあ、明日はいよいよ本番。数年前からの憧れだった、阿蘇カ
ルデラスーパーマラソン。

 6月6日、朝2時半起床。同室の長男も一緒に起きてくれました。すぐに、大
福5個、マーガリン入りロールパン6個を食べました。シャワーを浴びてトイレ
も済ませ、4時前に長男の運転する車で出発。
 車中で何となくお腹がゴロゴロし始めたので、少しウェアを緩めに。会場に
はパンやバナナもあったのでまた少し食べようかと思ったのですが、なんだ
か本格的にお腹がゴロゴロ言い始めました。少し寒く感じたのでトイレに並
んだのですが、順番を待つ間にお腹のゴロゴロ感は増すばかり。そのうち
治まる。走り出して体が温まってくれば治る。少なくとも、一度トイレに行け
ばそれで回復するはず。その時の私は、まだ軽く考えていました。

 5時。長いレースの始まりです。スタートを待っている間はそれほど寒さを
感じなかったのですが、走り始めてしばらくすると手が冷たくなってきまし
た。お腹の調子も悪くなる一方です。この段階で持っていたタオルをお腹に
当てて腹巻代わりにすることができたはず。少なくとも、格好など気にせず、
シャツinランパンにすべきでした。しかし、私は何の対応もせず、そのまま走
り続けました。

 今回の大会前、全ての事態は想定の範囲内、そう考えて準備をしてきた
つもりでした。降雨、早朝の寒さと夕方の気温の低下、日中の暑さ。貧血、
足の痙攣、右足裏と甲のしびれ、右膝痛、左足首の張り、左足付け根と股
関節の痛み。果ては中岳噴火の想定まで。それが前日はひどい雨と風だっ
たものの、大会当日は梅雨入りしたとは思えない穏やかな晴天。絶好の気
象条件。おまけに、私には長男のサポートというこれ以上ない好条件です。
それが。

 10qを過ぎると膨満感と便意で苦しく、ひたすらトイレを探してキョロキョ
ロ。それでも20qまで1キロ6分を維持。しかし、高森の急坂を登り切ったとこ
ろで我慢の限界。もうだめだと思いましたが、幸いトイレがあり駆け込みまし
た。ひどい量のガスと下痢でした。その後は数分おきに生じる便意に立ち止
まって耐え、トイレがあれば入ることの繰り返し。トイレで紙をもらってポケッ
トに入れて走り、山道に隠れること3回。おまけに最初のトイレの際、長時間
しゃがんでいたためでしょうか、右膝が痛くなってしまいました。一時的と思
って走ったのですが、回復してはくれませんでした。
 39qでリタイアが頭をよぎりましたが、長男のことを考えるとあまりに申し
訳なく、必死で走り続けました。50.8qの関門は制限時間の1分少し前に通
過しましたが、ここでのトイレ&栄養補給に時間を取り、次の64.4qの関門
に着いたのが13:41。制限時間を6分超過で失格でした。

 下痢で脱水状態の上、20q以降は何も食べられず、水分補給だけでガス
欠。40q以降は制限時間ギリギリのため、途中の給水所には食料がほとん
ど残されていませんでした。自分の不注意で招いた結果とは言え、あまりに
無様でみじめな終わり方。絶好の気象条件だった阿蘇の山はあまりにも美
しく清らかで、自分だけが世界から取り残されたような気持になりました。遠
くに聞こえるアオバトの声が、哀しみを一層増しました。
 ホテルでの少し早目の夕食時、目の前に広がる阿蘇の五岳が夕日に輝い
ていましたが、直視できませんでした。3日間も使って応援に来てくれた長男
に申し訳ない。情けない父親でした。

 数年前から、大福を一度にたくさん食べるとガスが出ること、少しお腹の
調子が悪くなることはわかっていました。なのに、なぜこれを朝食に選んで
しまったのか。家族が応援に来てくれていることで気が緩んでしまったの
か。全く軽率であったと言うしかありません。また、これまでランニング中に
腹痛で困ったことが無かったため、「俺の胃袋は強い」と思い込んでいまし
た。これも過信としか言いようがありません。大会直前の6月2日の夕方、特
にこれといった理由もなく突然下痢になったというのに…。そして、「すぐ直
るはず」と考えて何の対策も取らなかった、怠慢。

 リベンジを誓って練習に励んだ2016年の春。しかし、4月14日と16日に熊
本県で発生した大きな地震は、大会中止を余儀なくさせました。被災地の一
日も早い復興をお祈りするとともに、少しでも何かお役にたてることがあれ
ば協力させていただくつもりです。そして、できることなら2017年6月、もう一
度挑戦させて欲しいと思います。

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